中学2年生の息子が離断性骨軟骨炎(野球肘)と診断され、来月、手術を受けます。専門の医師によるとレベルはすでに後半とのこと。術後、バッティングまで4か月、投球まで6か月程度が一般的に要する期間だと言われました。結果次第で長くなるとも・・。
半年間、投球を制限されるのなら、いっそ左投げへの転向も考えています。その場合は、息子と相談し、相当な覚悟で臨むつもりです。
ところで、離断性骨軟骨炎(野球肘)で手術を受けた場合、投手としてこれまで通り、さらに練習次第では成長が見込めるほどの復帰は可能なのでしょうか?
仮に可能であった場合、これまで以上に気を付けることはあるのでしょうか?
野球における投球障害
野球における投球障害は、生理学的には明らかに矛盾した動きといえます。とりわけ投球動作における腕の動きには、大きなストレスがかかっているといわれています。肘を上手く使って投げることの出来る選手は少なく、それゆえ肘を上手く使うことの出来る選手は、どうしても投球の機会が多くなりがちです。
それゆえ投球過多による肩の疲労骨折やルーズショルダー、野球肘など、多くの問題が生じやすくなります。これらの障害は、肩や肘を十分に休めリハビリテーションを行うことでおおむね治療することが可能です。投球過多を避け、正しい投球フォームを身につけることが最良の治療法であるといえます。
離断性骨軟骨炎(野球肘)
成長期にボールを投げすぎることによって生じる肘の障害を離断性骨軟骨炎(野球肘)といいます。投球時や投球後に肘が痛くなります。肘の伸びや曲がりが悪くなり、急に動かせなくなることもあります。
投球障害の中でも重篤な疾患で、放置したままでいると、進行し、スポーツ活動が著しく制限され、日常生活でも障害が残ることがあります。
「肘のリハビリ」、「肩や股関節など他の部位の筋力強化」、「投球フォームの修正」が上手くいけば復帰は可能です。
成長期野球肘の原因と病態
繰り返しボールを投げることによって肘への負荷が過剰となることが原因です。肘の外側で骨同士がぶつかって、骨・軟骨が剥がれたり痛んだりします。また、肘の内側では靱帯・腱・軟骨がいたみます。肘の後方でも骨・軟骨がいたみます。
- 骨軟骨が成長しきっておらず、投げることで構造的に弱い組織に負荷がかかる
- 投げる数が多い
- 全力で投げることが多い
- 投げ方が悪い
間違った投球フォーム
- 「肘下がり」
- 「手投げ」
- 「肘の突き出し」
- 変化球を投げるときに「不自然に肘を捻じる」
- 「体が開くのが早い」
これらには共通の問題があります。それは 「速く力強い球を投げてやろう」という気持ちの力みです。そういった気持ち(意識)を改善せずに枝葉にとらわれては、本質を見落とします。
投げ方・体の使い方のコツは一言でいってしまうと「力まないこと」です。
イチロー選手は、2016年のあるインタビューで
「リラックス!リラックス!と言われて肩の力だけを抜いても無理。」
「膝の力を抜いたら肩の力も抜ける」
「目に見えた部分(肩に力が入っている)しか言えない人が多い」
と仰っていました。
速く力強い球を投げようとすると肩に力が入りやすいです。そうならないために意識を足元に落とします。
「下半身からの力をボールに伝えよう」
これを意識するだけで肩の力は抜けて、上であげた悪いフォームを自然と修正してくれるでしょう。
ウインドウィローのパーソナルトレーニングで自然と肩の力が抜けて、体を効率よく使った投球が出来るようになります。それによりケガの軽減と投球パフォーマンスアップが可能です。
肘関節モザイクプラスティー
肘関節モザイクプラスティーは、肘の離断性骨軟骨炎に対して行われる手術です。外側広範囲型で 手術をせずに様子を診ていたら 悪化してしまうことがあります。
既に骨と軟骨が遊離し、さらに軟骨が変性していた場合は、骨と軟骨を固定する手術は癒合しない可能性があります。 そこで膝の関節内から 骨と軟骨を円柱状に採取して、欠損した部分に 骨と軟骨柱を移植します。
欠損部に モザイク状にパズルをはめていくように 骨と軟骨を移植するのでモザイクプラスティーと言われています。
術後リハビリテーション
リハビリテーションは,愛護的なROM-exから開始し、術後2ヶ月で全可動域の獲得を目指す。
術後3ヶ月でMRI検査を行い、骨軟骨の回復が良好であればinterval throwing programを開始する。
画像所見や臨床症状を考慮しながら,競技復帰は5~6ヶ月を目安としている。
また,全例にはTHABER conceptのもとに,投球中の動的アライメントを改善すべく,ストレッチや筋機能改善訓練,投球動作練習を併用している。
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎に対するmosaic plasty 術後のリハビリテーションについて-医療法人 MSMC みどりクリニック
interval throwing program(インターバルスローイングプログラム)
インターバルスローイングプログラムとは、投球選手の傷害もしくは手術後の円滑な腕の動きや筋力の回復に合わせ、競技復帰に向けて徐々に投球距離や投球数を増やしていくプログラムです。
THABER concept(Total Horizontal Abduction「水平外転」 & External Rotation「外旋」 Concept)
投球中、十分な肩外旋がとれていれば、加速期での肘に作用する外反力は最小になると考えられています。
この場合の肩外旋は脊椎の伸展、肩甲胸郭関節の上方回旋や後傾、肩甲上腕関節の外旋といった身体運動の総計であり、肩甲上腕関節だけの外旋ではないことが重要で、このことをTHABER concept (Total Horizontal Abduction & External Rotation Concept)と称されています。
野球障害肩
野球障害肩は、過角形成などによる誤使用が発症要因となります。
野球動作時に肩の痛みや違和感がある状態
野球障害肩は、投球動作時に肩に違和感や痛みを伴い、思うようにボールが投げられない状態、つまり投球を障害する肩の病変の総称です。病変は、肩峰下滑液包炎、腱板炎・腱板損傷、関節唇損傷、インピンジメント症候群など多彩です。
肩の使用過多と誤使用
肩の「使い過ぎ(オーバーユース)」が発症要因といわれていますが投球動作は下肢・体幹・上肢と身体全体で生み出されたエネルギーをボールに伝達する運動であるため、フォームの破綻や技術不足によって肩に大きな負担をかけてしまいます。このような「誤使用(マルユース)」も発症要因と考えられます。
具体的には、トップポジションでの体幹の回旋、胸椎の回旋、肩甲骨の内転運動などが不足すると、肘が肩甲平面より大きく後方へ引かれる。このような過角形成は野球障害肩を発症する要因となります。
また、肩自体に問題がない場合でも、前腕の回内や股関節の内旋・内転が制限されると、アクセレーションからフォロースルーで肩関節に過剰な運動を強いるようになり、これも投球障害の発症要因になります。
野球選手のためにウインドウィローが出来る事
骨・関節のアライメントが正常であっても、誤った投球動作によって関節のねじれや衝撃が大きくなったり、運動効率が悪くなって傷害につながる可能性は大きいです。
従って、静的な骨・関節の形態(配列)を評価するとともに、運動時の関節運動の連関を分析しつつ、正しい動き、使い方をも評価する必要があります。
野球を今後長く高いレベルで続けていくには、いかに効率よく体を使うかにかかっています。無駄な力みのある非効率な体の使い方をすることによって、ケガをしやすくなり、パフォーマンス力も低下してしまいます。
ウインドウィローでは手技で体を緩め、体幹を強くし、更に効率よく体を使うコツを懇切丁寧にお伝えいたします。