体の力を抜く方法(コツ)

Question

体の力を抜く方法を教えてください。体がリラックス出来ていると、確かめられる方法もあればぜひ、お願いいたします。

無意識のうちに、体に力が入ってしまっているようです。

部活中にコーチから必ず『肩の力をぬけ』と言われますが、力を入れているつもりがないので、力を抜く方法が分かりません。

「ゆったりとした音楽を聞く」「アロマをたく」「寝る前にホットミルクを飲む」というような、ふわっとしたリラクゼーションではなく、

『この姿勢は力抜けるわぁ』というような、分かりやすいものがあれば教えてください。

どうなっていたら、力が抜けている状態なのかも知りたいです。
よろしくお願いいたします。

Answer

自分の努力でいったん生じさせた筋緊張を積極的かつ確実にゆるめるには、入れていた力をただ単に抜くだけでなく、積極的にゆるめるような力の抜き方をするように努力しなければなりません。

ですが、緊張させるための力の入れ方は上手く出来ても、その緊張をゆるめる力の抜き方についてはあまり上手ではないのが一般的傾向です。家庭や学校などで、これまでそうした力の抜き方を重視してこなかったからです。

ところが、スポーツのなどの動作の達人たちは、そうした力の積極的な抜き方、緊張の微妙なゆるめ方に、さまざまな工夫を凝らしているものです。

それは「スポーツ」だけではなく、「楽器の演奏」であったり、「踊り」であったり、「書道」であったり、習い事ではなくても「歯の磨き方」や料理の際の「包丁の使い方」や「フライパンの持ち方」にしてもそうです。

体の力が抜けていた方がいい理由は、抜けていることによって、体全体の力が引き出せるようになります。

例えばいままでは荷物を持ち上げるときに腰に負担が集中していたのが体全体に分散され重い荷物も結構楽に持てるようになります。さらに腰痛や腱鞘炎などの予防にもなります。

野球でいえば、早く投げようと力むと腕に負担が集中します。

この時に体全体の力が適度に抜けていると足腰の回転が生まれその力が流れるように腕に伝わることで、フィジカル(腕の重さ)のパワーを上手くボールに乗せることができます。すると肩や肘の故障の予防にもなります。

ですがその抜き方が難しいですよね。きっと教えている方も力の抜き方が分からない為、曖昧な表現になってしまっているのかもしれません。

イチロー選手も、2016年のあるインタビューで

「リラックス!リラックス!と言われて肩の力だけを抜いても無理。」

「膝の力を抜いたら肩の力も抜ける」

「目に見えた部分(肩に力が入っている)しか言えない人が多い」

と仰っていました。

体の力が抜けているかを確認する方法はあります。またそれは体の力を抜くためのトレーニング法にもなります。これは五輪金メダリストの小平奈緒さんも取り入れていた「古武術の鍛錬法」でもあります。古武術とは古くから伝えられ、剣道や柔道などのもとになったものです。

小平奈緒さんの古武術の先生によると、

例えば腕を相手に捕まれた場合、捕まれた場所を意識すると周辺の筋肉しか使えず、腕を動かせない。だが、無意識に伸ばしたい場所に向かって腕を動かすと、相手を振りほどくほどの力が生まれる

中日新聞 :小平、古武術で進化「メダルの先」に照準

実はこれ、古武術の鍛錬法でもあります。 私の所属する流派ではこれを「八光捕り」といいます。

「八光捕り」の目的は、意識に上らない緊張に気付き、それを取り除くことです。人は動作を行う時、自分が力を入れている、自分が動かしていることは、はっきりわかっていると思われています。ところが、なかには本人がわからないうちに勝手に入ってくる緊張や動きがあります。

たとえば腕をあげようとするとき、肩を一緒にあげたり、肩を前に突き出したり、首や肘を曲げる、反対側の腕を突っ張るなどのように、腕をあげるという課題に随伴して、課題以外の緊張が現れるもので、「随伴緊張」「随伴運動」と呼ばれています。これらのなかには、そうした緊張や動きが課題の助けになる場合もありますが、反対に妨害・混乱させるものもあります。

なぜ緊張は熟練したスポーツパフォーマンスを損なうのか?

※ご視聴の際は、音声が出ますのでご注意下さい。

微妙で細かな精密作業を注意深く慎重に進めようというときなど、途中で思いがけなくピリッと緊張が入って作業を妨害することがあります。それほど微妙な作業でなくても、ある動きをしている途中、肘や腕、肩や首などにピクッと緊張が走って、その動きのコースを乱すということがよくあります。書道で筆の運びが乱れたり、射撃やボウリング、ゴルフなどで手許が狂ったりするのはこのためです。そうした緊張を取り除くトレーニングが「八光捕り」で出来ます。

体の力を抜くためのトレーニング法(八光捕り)

  1. 二人一組になります。
  2. あなたは正座をして両手を膝の上に置きます、
  3. パートナーに両手首をぐっと膝に押さえつけてもらいます。
    ※はじめは軽い力で始めてください。肩を痛めるおそれがあります。
  4. あなたはその状態から「体の力を抜いて」両親指を耳の方まで持っていきます。
  5. 上手く体の力が抜けているとパートナーは「相手の力感が感じられず」に抑えられなくなります。逆に力が入っていると「力と力の反発」がおきます。
  6. あなたが上手く力が抜けている場合は呼吸が乱れることなく、姿勢も崩れず楽に上げることが出来ます。逆に力が入っていると、呼吸はとまり、姿勢は前のめりになり、力と力のぶつかり感を感じることでしょう。
  7. これをひたすら反復です。

誰がパートナーになったとしても「常に心をフラットな状態にする」ことがコツです。試合でも同じことがいえそうですよね。

この時に覚えた「心と体の感覚」をもって体をつかうと、姿勢が良くなります。そして最も大事な「手の握りが優しく」なります。

バット、ラケット、ボール、歯ブラシ、包丁、フライパン、更には赤ちゃんの抱っこに至るまでです。

その結果、 スポーツパフォーマンス力の向上、肩や腰、肘、膝、足首などのケガ、または家事などによる腰痛や腱鞘炎などを防ぐことができます。

どれくらいで感覚が身につくかは性格によって違うので何とも言えないのですが、男性よりも女性の方が早いことはたしかです。それは男性に比べて力もうとする機会が少ないからです。

地味で単純ですが、体にとってはとても大切なエッセンスが詰まったトレーニングです。

この技術をしっかりと習得するためには、協力者が実際に体の力が抜けていて、理屈が分かっていることが重要です。

ウィンドウィローではそれが出来ます。

ただしとても繊細な技術ですので、一朝一夕に身に付くものでもありません。途中で挫折される方もいらっしゃいます。

ですがご自身のお体のほんの少しの変化さえ細かく感じ取れる方、あるいは感じようと努力される方にはきっとお力になれます。ウィンドウィローのトレーニングによってスポーツパフォーマンスの向上を実感することが出来ます。